衝撃のラスト

よく使われるようなフレーズが上に書いてありますが、いやまったくそうですよ。
しかもそのラストがハッピーエンドでもなんでもない点が特に。
まさしく、以前紹介したSS-GBの後継といえるのでは。

マリ・デイヴィス著「英国占領〈上〉」、「同・〈下〉」
二見文庫ミステリ・コレクションから。
紹介しようとしたら画像が拾えませんでした。といって我が家にはスキャナもないので、konozamaにリンクを張っておきます。
さて、ミステリ・コレクションに分類されていることからも分かるように、これも英国仮想戦記らしく架空の歴史そのものよりもそこで起きるもろもろの事件を取り扱っています。ストーリーはこのように。

ドイツ語ができるという理由で捕虜収容所から釈放され、ドイツ軍の占領統治下におかれたイングランド南西部の故郷に帰ってきたニコラス(ニック)・フリクール・ペニー軍曹は、その生まれ育った町の変わりようを見て愕然とした。
商店はつぶれ、路線バスは軍専用、そして市内の州庁はいまや占領軍が軍管区司令部に使っている。さらにジョージ国王とチャーチルはカナダに逃れ、傀儡のウィンザー公と護国卿になりおおせた独フォン・リッベントロップ外相が君臨する王国にあって、彼の知っている英国はもうどこにもない。
彼はそこで、司令官兼軍政長官フォン・グラースの秘書、通訳および“英独友好連盟”担当とされた。
英独友好連盟とはその名の通り、両国を少なくとも表面上、友好的にするためのものだ。ヒトラーによれば「占領する国々を腐らせてやる」手伝いを、彼は押し付けられたわけである。
経験上、長官はかなり良心的な人間といえたが、彼と対立する親衛隊の出張所に君臨するシュトルツSS大佐はゲシュタポに関する先入観そのままの人間で、二人の対立は次第に顕在化する。
さらに彼の旧友ロイはレジスタンスに身を投じ、もう一人の旧友マティは独軍から委託された農場経営に関して父といざこざが絶えない。
徐々にドイツ化する連合王国で、次々に親独派があらわれ、彼らの周りをうろつく。これは当然、ニックがドイツ軍の、しかも軍管区司令官直属の職をもらっているためだ。
そんな状態で、ロイに続いてレジスタンスとなった彼は、積極的なドイツ軍協力者の仮面をかぶって反独運動を繰り広げるという、二重生活を強いられることになる……。

SS-GBよりも、二重生活に関する部分が多く盛り込まれていますが、当然でしょう。
なにしろこの本の原題は「Collaborator」、すなわち対敵協力者です。コラボという言い方もありますね。
もちろんドイツ側から見れば内応者なのですが、ともかく主人公のニックは表向きコラボ、実態はレジスタンスとして働くことになります。
当然、レジスタンスほどでないにしろ愛国心がある人間からは白い目で見られますし、逆に親独派からは色目を使われ、精神的に磨り減ってゆきます。しかし実は、一番磨り減っているのは彼ではなかった、というオチ。
ラストに関してはどんでん返しに近いので、読みたいと思った奇特な方は現物を手に入れることをお勧めいたします。