ずいぶん長い前置きでしたが

SS‐GB〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)

SS‐GB〈上〉 (ハヤカワ文庫NV)


SS‐GB〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)

SS‐GB〈下〉 (ハヤカワ文庫NV)

レン・デイトン著「SS-GB」。
題名の奇抜さで惹かれた作品でしたが、読んでみるとあら不思議、違う世界の歴史推理小説でした。
例のごとく、ストーリーはこちら。

1941年11月。
ロンドン警視庁のダグラス・アーチャー警視は、いつもどおり山のような書類と格闘していた。二年前に比べて書類の量が激増した理由は言うまでもない。連合王国本土がドイツ軍に占領され、敗戦処理がたまっていたからだ。
今では彼の上司もドイツ人。フリッツ・ケラーマン将軍(正式には、親衛隊師団指揮官)である。乗馬とチェスが得意で釣り好きな彼は、週一の対面報告を利用してアーチャーに不快な事実を告げる。
ドイツ本国から、親衛隊の将校がやってくるらしい。名前はフート、階級は連隊指揮官(大佐)。RF-SS、つまり親衛隊国家長官ヒムラーの直属だ。なんのために来るのか、理由は不明。
アーチャーは前の夜に起きた殺人事件の現場を検証し、その足で空港へフートを出迎えに行くが、そこでフートから驚くべきことを知らされる。
なんと、検分したばかりの殺人が、彼のロンドン出張の理由だというのだ。
たかが殺人事件に親衛隊が本腰を入れるのかとアーチャーはいぶかしむが、それどころの話ではなくなってしまう。部下のウッズに怪しい影がつき、捜査上の成り行きで乗り込んだパーティーには秘密会議がしかけられ、親衛隊とドイツ国防軍の権力争いにも巻き込まれた彼は、いやおうなしに関わりたくもない陰謀の中心部へ吸い込まれてゆく。

題名の「SS-GB」とはドイツ語で「Schutzstaffel-Grossbritannien」の略で、訳者の後藤安彦氏は「イギリス本土駐留ドイツ親衛隊」と意訳しています。要するにケラーマンの所属なわけですね。
この小説のおもしろいところは、歴史改変だけではなくそのうえで推理小説となっているところで、先述の「ロスト・メモリーズ」含め海外系の歴史改変小説はそこが上手だと思います。種明かしがグダグダだとしても。
日本の仮想戦記やトム・クランシーものは、個人的にはあまり面白くないのですが、結末が最初から分かってしまっているためにつまらないのかもしれません。予定調和といいますか。
逆に、最初に結末が出て「どうしてそうなったのか」を見せる小説は、面白いと思うのですが。
ああ、こうしてみると私はホームズよりルパンが好きなんだな。