Vフォー・ヴェンデッタ

Vフォー・ヴェンデッタ (竹書房文庫)

Vフォー・ヴェンデッタ (竹書房文庫)

TSUTAYAで借りてきた第二弾。
前々からその世界観が気になっていたのですが、どうもこの映画はウォシャウスキー兄弟とナタリー・ポートマン、それに主人公の中の人をやっているヒューゴ・ウィーヴィングあたりがクローズアップされていたようです。
でもストーリーは面白かった。見てる分には。
というわけで、以下ストーリー紹介。

ブリテン及び北アイルランド連合王国
欧州の北西に位置するこの国は、勃発し終結した第三次世界大戦にもさほどの被害を受けず、今や統一国家ではなくなった旧植民地のアメリカ合衆国を見下しながら、安定した生活を国民に約束していた。
ただひとつ、全体主義の支配する統制国家である点以外では。


夜間外出禁止令に反して知人の家に向かっていたイヴィー・ハモンドは、運悪くフィンガーマン(政治警察局員)に捕まり、暴行されそうになる。
ヒロインの常として彼女は、仮面を被ったエキセントリックな主人公Vに助けられる。しかし、帰宅しようとした彼女はVに「コンサート」に誘われ、中央刑事裁判所を見下ろすビルの屋上に案内される。
“演奏会”というのは国の緊急放送網をジャックして大音量で流したチャイコフスキーの「序曲1812年」であり、同時に行った裁判所の爆破であった。


イヴィーは翌日、勤務先の国営テレビに向かうが、Vはそのスタジオに侵入、今度は電波ジャックを行い一年後の11月5日に議事堂の前へ集まってくれと国民に呼びかける。その日は“ガイ・フォークスの日”、1605年に議事堂の爆破を図ったテロリストのガイ・フォークスが拘束されたことを祝う日だった。


Vと共にいる場面が監視カメラに捉えられた事で、イヴィーは追われる身となり、一時Vの隠れ家に身を寄せるも彼が政府の転覆を企むテロリストと知り、結局上司のゴードン・ディートリッヒの家に転がり込んだ。
ゴードンは「君なんてどうってことない」という不可解な理由で、政治犯になった彼女を迎え入れる。しかし反体制的なテレビショーを行った事で彼も拘束され、イヴィーも気付いた時には強制収容所にいた。


一方、11月5日を控え、政府の終身議長アダム・サトラーは不安に駆られていた。
刑事警察でV事件を担当するフィンチ警視は閉鎖された強制収容所のことばかり調べているし、政治警察の長クリーディーは権力の座を狙っている。盗聴システムはジャックされ、国営テレビは信用を失い、監視カメラの網膜照合機能は仮面のせいで役に立たない。サトラー議長は日を追うごとにいらつき始め、政府部内に亀裂が走ってゆく。
Vの経歴と過去の悲惨な事件が繋がり、フィンチ警視は政府の暗部に突っ込むべきか苦悩する。そして、ある日突然、Vの仮面がロンドン中の家庭に配達され始めた……

まあ、この映画は色々と考えさせられる映画のようで、あまりこうしたことには意味がありません。しかし、ニヤニヤしてしまうストーリー展開やセリフが多数あるのも事実です。
まず、冒頭に流れる国営テレビのトークショーから。司会のプロセロ氏は過激に保守なのですが、それが劇中のイギリスでは大人気という設定です。
内容は、元アメリカ合衆国が医療品の援助を求め、代わりに食糧をコンテナに詰めて送ってきたという時事ネタに関するもの。「今こそボストン茶会事件の復讐の時だ、港に行って全て投げ込んでやるんです」などどぶち上げて、挙句にアメリカをこんな風に呼ばわります。
上から、英語、日本語字幕、日本語吹き替えの順。耳コピなので聞き違いはご容赦を。

U.S.A. Ulcered Sphincter of Asserica.
アメリカ・ガス臭国。
ぴったりでしょう、アホメリカ便臭国。

比べると、字幕と吹き替えはとても穏やかな表現と言うしかありません。うまく訳せませんが、だいたい「ケツの腐った括約筋」程度の意味でしょうか。
日本語字幕で見ていた時、聞いて爆笑しましたね。最初は字幕に引きずられて、「Sphincter(括約筋)」を「Stinks(悪臭)」と聞き間違えていましたが。
ちなみに、20年前までは「完璧な国」だったアメリカがどうしてそうなったかと言えば、プロセロ氏の見解はこちら。

Godlessness. Let me say that again. Godlessness.
神を冒涜したから。もう一度言う、冒涜行為だ。
神を信じないから。もう一度言います、神を信じないから。

直訳すると、「冒涜、もう一度言いましょう、冒涜だ」程度になるんでしょう。
クソまじめにこんなこと語るプロセロ氏の中の人の苦労が思われますが、このテレビショーが現実世界の何をおちょくっているのかは一目瞭然で、よく言われるイギリスの諧謔全体主義国家では堕ちてしまうのだとよく分かった瞬間でした。
次に、予告編などでも使われていた童謡について。今度は上が原語、下が日本語吹き替えです。

Remember remember the fifth of November
忘れるな忘れるな、11月5日を、
Gunpowder, treason and plot.
火薬陰謀事件を。
I see no reason why gunpowder, treason
その陰謀と反逆を、
Should ever be forgot...
どうして忘れてよいものか。

ガイ・フォークスの歌。イギリスでは誰でも知っている俗謡なんだそうです。日本で言えば「通りゃんせ」「かごめかごめ」あたりかな。
それを物語の中心に持ってきて、Vをイギリスにちなんだテロリストにしようという、ナショナル・トレジャーのような内輪ネタですが、面白いのでいいです。
そして最後。Vが予告した11月5日が段々と近づき、サトラー議長(英語ではHigh Chancellor、直訳は高級宰相。太政大臣のようなもの?)が政府首脳部に飛ばした檄からです。

I want this country to realize that we stand on the edge of oblivion.
この国が、存亡の危機にあると国民に分からせるのだ。
I want every man, woman and child to nunderstand how close we are to chaos!
男にも女にも子供にも、混乱の闇が迫っていると分からせろ!
I want everyone! to remember!! WHHHHY THEEEEY NEEEED US!!!
そして、国民一人ひとりに、この国には我々が必要だと思い出させろ!!

劇中の会議でもほとんど映像出席のサトラーですが、自分に危機が迫っているからかここだけは妙に迫力がありました。
でも、原作の漫画でも議長には別の名前がついてるんだし、わざわざヒトラーを連想させる名前に変えるのはわざとらしすぎると思うんだ。

と、小ネタばかり出しましたが、本筋が面白くないわけでは決してありません。ただ書き出すと止まらなくなるので自重しました。
想像力さえあれば、大はずれの映画ではないはずです。雑文帳をご覧の数少ないみなさん、おひとつどうでしょう。

追記。
あらためてDVDを見直したら、英語字幕機能があったことに気付きましたorz