親族との対立

前置きが長すぎた。本題に入りましょう。
このアニメの主人公二人の思想は、荒く纏めれば「圧制者を倒し新たな権力を作る」と「圧制者に協力しつつ体制変革を図る」と言う事になります。
これを現実にやったのが、ネルソン・マンデラ
アフリカ民族会議の幹部として、また南アフリカ初の黒人大統領として有名ですが、ここで紹介するのはアフリカ民族会議時代の話。何せ舞台になるのは悪名高きホームランド、その中でも真っ先に独立したトランスカイ共和国です。
トランスカイ共和国は、コーサ族とソト族が主な構成民族。ソト族は前からトランスカイ(南ア東部)にいたところを併合、コーサ族は元々南ア南部に暮らしていたのが、イギリスがケープ植民地を占領してから彼らに押されて東部のカイ川沿岸に移住、そこも併合されて現在に至ります。
トランスカイとは、その名の通り「カイ川沿岸」の意。部族内での予言騒ぎ(結局外れた)によって、併合前にコーサ族のほとんどは一切合財を失い、結果としてイギリスの植民地経済に組み込まれる事になりました。
しかし、これによってコーサ族は賃金労働に関わる時間が比較的長くなり、労働運動から政治家を出すようになっています。マンデラもコーサ族。
さて、1963年に南アフリカ共和国自治領、76年に独立国となった(国際的には未承認)トランスカイは、20年に渡ってカイザー・マタンジマという男の支配下にありました。
このマタンジマ、マンデラとは年齢が近く、彼がマンデラより3歳年上なのですが、血縁上もかかわりがあり、彼がマンデラの甥。年上の甥とは違和感がありますが気にしない。
しかしながら、既に分かるとおり二人の政治路線は真っ二つでした。
マンデラが「白人を倒し新たな権力を作る」、マタンジマが「白人に協力しつつ権限増加を図る」。
マンデラは民族会議副議長として闘争を続ける一方、マタンジマは独裁者化し縁故人事など始めた末、86年に汚職がばれて辞任。その後数人の為政者を経て南アの後押しを受けた軍事クーデターが起きたものの、クーデター派は白人政権に反旗を翻し、トランスカイは黒人運動家の避難所と化して行きます。
結局、マンデラと白人のデラクークが武闘ではない方針で人種差別撤廃を実現し、差別反対に衣替えしていたトランスカイは問題なく解散。その後マタンジマは東ケープ地方の伝統的首長会議の長に納まり、2003年に死去。南アフリカ政府が葬儀を主催したそうな。


で、結局何が言いたいのかって?
いや、事実と小説が似る事もあるんだな、と。別にスザクがそのうち失脚するんだとか言いたい訳じゃないですよ。