ですが

下宿の近所にはこいのぼりなど見なかったわけで。

さて、昨今はソマリア沖の海賊に手を貸しているなどで、欧米保守の憎しみをよりいっそう受けているアルカイダ系のイスラム過激派ですが、学習するだけアメリカよりマシだと思います。
何かといいますと、これ。

アルカイダ系組織、ヒップホップで若者のリクルート狙う(CNN)

ソマリアを拠点とする国際テロ組織アルカイダ系の武装勢力が、若者のリクルートを狙ったとみられるヒップホップ調の映像メッセージを流している。
この映像は、アルカイダが支援しているとされるソマリア武装勢力アル・シャバブ」が制作。18分あまりの映像に「迫撃に次ぐ迫撃、弾丸に次ぐ弾丸。彼らを地獄に送り込むまで止まらない」との音声がかぶせてある。
(中略)
これに先立ち3月には、アルカイダ指導者オサマ・ビン・ラディン容疑者のものとされる音声メッセージが公開され、ソマリアイスラム教徒に対し「西側に協力的なアフメド大統領を倒せ」と呼びかけていた。

久々に突っ込みどころ満載
まあ、最初はいい意味で驚いた点を上げましょう。
まず、遠いアメリカに向けてCMを発する行動力。
最近は「IT革命」の異名をとるサパティスタ民族解放軍にはじまって、いわゆるテロリストの情報通信技術は目覚しいものがありますが(以前ニュースで放送されたアルカイダのHPもレイアウトかなりきれいでしたし)、それを使えばこうして地球の裏側にも勧誘できるわけですね。
つぎに発信元の「アル・シャバブ」について。
アル・シャバーブともいいますが、彼らは現在ソマリアの南西部を支配しているイスラム主義団体(過激派)です。
イスラム主義とは現世をイスラム法コーランに書いてあることの逐語訳)だけで統治しようという主義思想で、これが“イスラム原理主義”の由来になっています。現在、ソマリアには他にもヒズブル・イスラーミやソマリア再解放同盟など同業他社は多いですが、今のところ彼らが最過激派。
そして映像の長さ。
18分のヒップホップとか気合入れすぎでしょう。どうも記事本文によればアメリカ出身者も製作に噛んでいるようで、英語は完璧とか。内容さえ痛々しくなければ文句なしですね。
なんですが。
最後の、ビン・ラディンのメッセージ。
「西側に協力的なアフメド大統領を倒せ」というやつです。
それはひょっとしてギャグで言ってるのか
このアフマド大統領、2年前までは過激派のボスだったんですよ。


シャリーフ・シェイフ・アフマド。
1964年7月25日、ソマリアのシャベーラハ・デーゼ州チャビラ生まれ。
エジプトの専門学校からスーダンリビアの大学で勉学にはげむ。専攻はそれぞれアラビア語学・地理学、法学・イスラム法学。
帰国後、内戦中も機能していたイスラム裁判所の地方連合(後のイスラム法廷連合・法廷会議)に参加。地元シャベーラハ・デーゼの州都ジョハールで簡易裁判所を任される。
数年後、とある学生が首都モガディシュで誘拐される。犯人は地元ギャング、目的は身代金。
当時よくあるパターンだったこの事件が、彼をソマリア改革への道に進ませた。

どこにでもいる小粒の指導者だった彼は、ここから進撃を始める。
2004年、アフマドはモガディシュの地裁管長になり、多くの同盟者を作る。そのなかに、法廷連合の立て役者ハッサン・アウェイスと、その友にしてアルカイダの一員(だと米国が言いはる人物)アデン・ハシ・ファラーがいた。
アフマドをトップに立てた法廷連合は、イスラム主義によるソマリア再建をかかげて地方軍閥を次々に打ち破る。
危機感を抱いたソマリア暫定政府は、法廷連合をテロリスト認定したアメリカの支援をうけつつ軍閥をまとめて抗戦するが、結局2006年、モガディシュは法廷連合が奪取。暫定政府軍は南部へ敗走した。

法廷連合は法廷会議と改称し、モガディシュの清掃活動などでいくぶん町をきれいにするが、欧米文化の排斥や女性差別など厳しいイスラム法の運用で支持を失う。
2006年末、かねてから交戦していたエチオピア軍がソマリアに侵攻。
法廷会議軍は緒戦で崩壊し、暫定政府軍とのはさみうちで壊滅。暫定政府軍は旧領回復を宣した。
アフマドは少数の仲間とともにケニアへ逃亡し、当地の刑務所で一月ほど過ごしたのちイエメンで元メンバーらと再会、エチオピアと対立するエリトリアソマリア再解放同盟を立ち上げる。

再解放同盟は暫定政府と接近、構成メンバーとして認められ、2009年には暫定政府の大統領となってイスラム的な政策を開始した。
しかし同盟からはすでに強硬派が離脱(エリトリア派)し、元メンバーが多数ながれこんだ過激派「アル・シャバーブ」とともに南部を支配するなど、先行きは不透明だ。


と、いうわけなんですが。
ちなみに再解放同盟エリトリア派を率いているのは前出のアウェイス、アル・シャバーブの幹部にファラーがいます(2008年死亡)。
要はただの内ゲバなんですね。
その結果が全世界向けの音声メッセージに回ってくるというのも、いかにも国際化の進んだ現代らしい話ですが。