最近は
映像化不可能といわれた作品が次々に映像となり、あるものは大成功しあるものは大失敗していますが、今日見てきたそれは明らかに前者の部類でしょう。
「ウォッチメン」。
WATCHMEN ウォッチメン(ケース付) (ShoPro Books)
- 作者: アラン・ムーア,デイブ・ギボンズ,石川裕人,秋友克也,沖恭一郎,海法紀光
- 出版社/メーカー: 小学館集英社プロダクション
- 発売日: 2009/02/28
- メディア: 単行本
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なにせ、基本的に辞書的トリビア的記述が多いはてなキーワードにおいてすら
アメリカンコミックス史上に残る傑作にして問題作
と手放しで賞賛し、その文言が編集で消されずに残っているほどのもの。実際読みましたが、映画では後半部分の脇筋が幾分消されていたものの、大筋とメッセージを完璧に残したすばらしい映画版だったと思います。
さて、ストーリーはこちら。
1920年代に覆面の犯罪者をまねることで現れた“覆面自警活動者”──つまるところスーパーヒーローたちは、アメリカ文化にとけこみ、また従軍するなど一定の地位を保っていた。
だが彼らに不快感を抱くものも多く、ヒーローたちのあるものは殺され、あるものは精神を病み、ついに禁止条例が出されるに至る。しかしその後も、合衆国政府に保護され活動を許されるものや、勝手に活動するものもいた。
さらに本物の戦略級超能力者が出現して、彼やヒーローの活躍でベトナムはじめ各地の共産勢力が敗退を続ける。ついにベトナムがアメリカへ併合されるに至ってソ連は警戒レベルを全面改正、米ソの溝は深まってゆく。
この国家的危機を前にニクソン大統領は再選を重ね、核戦争におびえる世間にはあきらめ気分が漂っていた。
そんな折、一人の男が他殺死体で発見される。
男の名はエドワード・ブレイク。裕福なニューヨーク市民だった彼は、実はヒーロー“コメディアン”であり、条例可決後も政府に保護されるエージェントだった。
条例を無視して活動をつづける彼の盟友“ロールシャッハ”は事件を独自に調べ、ヒーロー狩りの始まりと考えて元ヒーローたちに警告してまわるが、彼自身が条例違反で逮捕されてしまう。
そのころ、軍で勤務していた真の超能力者“Dr.マンハッタン”が有害な放射線を発していると報道され、彼はどこかへテレポートで失踪してしまう。
Dr.マンハッタンがいなくなればアメリカの優位はなくなることになり、これを好機とみたソ連はアフガニスタンへ侵攻。ヒーローたちの立場とともに、国際情勢も悪化するばかりになっていた。
元ヒーローたちはロールシャッハを救出し、真の悪役を探し出す。
そして、彼らが見た「真実」とは……。
正直、期待してませんでした。
名作の映画版が大コケするのはよくあることですし(「ドラゴンボール」とか)、監督以下製作陣が「300」と同じ。となれば、私としては低評価にならざるを得なかったので。
まあ、杞憂でしたがね。
アクションシーンや暴力描写の克明さはそのままに、ストーリーをきちんと追って分かりやすく映像になっています。まず、オープニングテーマをバックにヒーローたちとアメリカの活躍(と失態)の歴史が映像だけで紹介された時点で、完全に気持ちを切り替えなくてはなりませんでした。
キャラ造詣については原作の功績なのでそちらに譲るとして、やはり映像。
題名のもとになった言葉「誰が見張りを見張るのか?」のとおり、正義の味方として活動するうちに各人各様の方向へ道を踏みはずしてゆくヒーローたちが生々しく描かれているだけでも、金を払う価値はあると思います。
もっとも、この映画の見所はまた別。ですが正直なところヒーローもので正義の是非を問うのは、怪獣映画で怪獣の善悪を問うなみに深く考えさせられるうえ難易度が高いので、ぐだぐだ言わず見た方々それぞれの思索にまかせたほうがいいでしょう。
個人的には、冒頭で小市民に戻っていた元ヒーロー二人が陰謀を知って復活しようとしながらも、最後にはまた平凡な生活へ戻っていたのが印象的でした。
なんというか、チャチい正義感に行動をふりまわされる一般人の香りがして。
さて、あまり興奮状態で書いてもしかたないので、映画版の最初と最後に登場する一文をもって、私の感動を表現して失礼します。
ロールシャッハ記 1985年10月12日。
今夜NYで、ひとりのコメディアンが死んだ。