批判が必要です

なにかと申しますと、これ。
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ざっと読んだだけですので的を得ていない可能性も大ですが、立ち読みの感想は
日本側史料はすべて捏造
朝鮮側史料はすべて真理
といったものになりました。
まあ、日本書紀嘘八百並べた説話集に近いものという御説は、言い方はともかく当たっている部分もありますし(身重で半島制圧した皇后なんているわけねえだろ常考)、広西に百済の遺民がいることについてはよく分からないので保留しますが、朝鮮半島に海洋国家があった点については信じてもいいのではないかと思います。半島の根っこを高句麗に押さえられていては、島国も同然ですし。
ですが、どうにも「勝ち組ゴロ合わせ」*1の感がぬぐえない。
百済が海洋先進国家だったと認めるにしても、一大貿易国家があったからといって、彼らがそのすべての地域を指導していたというのは、飛躍にすぎるのではないでしょうか。
たとえばゴアを支配していたポルトガルが、インド貿易圏を制覇していたわけではありません。むしろあれは、インド・ムスリム交通網に寄生していただけというか。
それから、十年前から有名ないくつかの改変箇所を列挙しただけで日本書紀すべてを捏造と決め付けるのは、いささかどうかと。
もっとも、こうしたことにあまり興味がないから、こんなことをほざけるのやもしれません。
私はどちらかというと、
日本書紀は捏造のかたまりで、たわいもない神話に過ぎない」
と言われるより、
「では、なぜ日本は、突如として歴史の改変を始めたのか」
と言われる方が興味の出る人間ですので。
そもそも百済天皇家の魂の故郷でもありますし、わざわざ征服したとか記述しなくてもいいと思うんですよね。さんざっぱら支援した上に亡命してきた王族を保護して、大唐帝国がバックの敵軍相手に反撃を試みるなんて、並大抵の辺境国家にできることじゃありませんから。
ひょっとすると、やりくちはともかく日本書紀は、日本が百済から精神的に独立したことを象徴していたのかもしれません。知らんけど。


追伸。
邪馬台国が「邪馬壱国」と読まれない理由が「大和之国」と発音が似ているからだとか、日本の考古学会では神功皇后エピソードが現実視されているとか、日本人のほとんどが意外に思うような説も飛びかっておりました。
このへんはさすがに、常識にとらわれない外国の学者ならではの発想ですね。

*1:都合のよい資料だけを引用し、自らの意に沿った結果しか出ないように論を運ぶこと。誰でも一度はやるのでは