ザ・カラフル・ウォー

黒宗。
史書によれば、彼らは長門の国のイエズス会員たちがつくった集団で、家光公のキリシタン禁止令にあたってお得意の論理と偽装工作を活用、そのまま完全な仏教徒になりすまし、その後は姿を消している。
彼らについての最後の情報は、キリスト教でも仏教でもない、誰からも異端とよばれるような教えを奉じていることだけを伝えていた。
彼らの怨念はまさしくどす黒い一つの形をなし、禁教が解けぬまま明治維新の混乱期に薩長軍を追って北上、そこであえなく封じられた。
その後、ひとかたまりの黒い液体と化した異様な呪物は、数度にわたって分離抽出を繰り返され、それらが七つに分けられて日本各地に散った。分離できなかった部分は、そのまま再封されたという。


そして現代。
色素が異常にうすいことを除けば、ごくごく普通の中学生、七色晴流。通称ぱれっち。
彼女はたまたま、実家の納屋で木製のパレットを見つける。
手に取った瞬間に崩れ、その破片も消えてしまったパレット。なにか黒いものが足元を這っていった気がしたが、彼女は見なかったことにした。
次の日、聞きなれない目覚ましの音で目を開けると、目の前には──
「何さらしとんじゃこのアンポンタン!」
……口が描いてあるあたりをせいいっぱい歪ませて金切り声を上げる、ほこりだらけのてるてる坊主が浮いていた。