名づけ方つづき

以前人名についてぐだぐだと書き連ねましたが、地名も同じ程度に大事です。特に西洋またはそれっぽい雰囲気の場所が舞台ならなおさら。
いい例がワシントンですね。
アメリカ合衆国の首都、正式名称ワシントンD.C.コロンビア特別区)。
ご存知の通り、大陸会議の代表にして大陸軍総司令官、のちにはアメリカ合衆国の初代大統領となったジョージ・ワシントンと、動機や本人の感想はともあれ、新大陸の存在を近代欧州に知らしめたクリストファー・コロンブスの二人にちなんだ名前です。
そうそう、「誰々にちなんで」というのは、英語にすると「in honor of」というふうに表現するらしいですね。逐語訳すると「誰々の栄誉を讃え」ということになるんでしょうか。
話を戻して。
さて、欧米列強が植民地を世界各地に獲得していたころ、その場所に最初に降り立った人間の名前を知名にしてしまうという、なんとも分かりやすく乱暴で人の迷惑を考えない命名法がはやっていたようです。
もちろんそれだけが命名法ではなく、他にはたとえば、植民者の出身地の名前をそのままつけたり(例:ロンドン、ポーツマスetc)、少し変えたり(例:ニーウアムステルダム[現ニューヨーク]、ペトロパブロフスク・カムチャツキーetc)しています。
一番の方法は昔ながらの呼び方を採用する(例:ワサッチ、ヨセミテetc)ことのように思えますが、今だから言えることですからね。
さて、その人名をそのままあてはめた地名では、オーストラリアのフリーマントルやブラジルのサンパウロなどがあります。聖人系はよくある手のようで、世界中にいくつもありますが。
さらに、この人名を土地につける方式は、なにも植民地時代だけのはやりではありません。
たとえば旧ソ連の首脳部は、よく地名に名を残しています。
ちょっと例を挙げてもウリヤノフスク、レニングラード(現サンクトペテルブルグ)、スターリングラード(現ヴォルゴグラード)、フルンゼ(現ビシュケク)、カリーニングラードなどなど、きりがありません。
他にも、ベトナムホーチミン、フィリピンのケソンシティほか、この命名方式は色々な場所で採用されています。
そうそう、最近放送が終わったグレンラガンでしたか、あのアニメでも途中からカミナシティなる都市が登場しましたね。たぶんそのうちシモンシティも近くにできるんだろうな。
で。
つまり、架空の世界における物語の場合、そうした地名もなきにしもあらずということがあります。
そんな時、まあ例えば先ほどのカミナシティを例にとると、カミナだけでシティはなくてもいいと思ってしまうのです。
なぜかって、劇中で英語が使われてるわけで。正直、あのテンポと熱さの前ではどうでもいいんですが。
その点、大河戦国ファンタジーの「氷と炎の歌」シリーズなんかでは、訳者の方がかなり奮闘されてました。固有名詞を除くほとんどの用語が日本語訳されていたし、地名も和訳にルビで原語を振ってある箇所がかなりありましたから。
キングスランディング他の大都市名は、さすがに王軍上陸市などとやらかす訳に行かなかったのでしょうが、それでもファンタジーの魅力のひとつ「地名が文章」がきっちり残っていたので、こちらとしてはホクホク顔です。
もっとも、その点では「ネシャン・サーガ」三部作の方がよほど徹底していたかもしれませんが。「臥龍山脈」とか「永遠の防壁」とか、和訳がすごすぎ。
ともかく、人名に負けず劣らず、地名ひとつとっても色々と情報が含まれている、ということを言うつもりだったのですが、ただの異世界ファンタジー語りになってしまいましたね。
ハイ・ファンタジーって本当に面倒臭いな。